〔建物状況調査の契約内容〕

建物状況調査委託契約書の雛形の中には、「依頼者」に「一度だけ説明する」と内容のものがあるそうです。依頼者が売主の時、調査報告は売主に一度なされます。宅建業者は「建物調査結果の概要」を入手して重要事項説明書で説明する必要がありますが、説明の際、買主から質問があった時は、建物調査技術者による説明を受ける必要が生じます。そうなると契約以外の対応となりますので、契約内容を確認し、重説時の同行や複数回の説明を行うときの費用の問題など、あっせん前に詰めておくべきです。

重説と契約を同日に予定していて、買主から説明を求められて説明できないまま契約に進んだ場合も、トラブルに発展する可能性は高いため、慎重に日程を決めるべきでしょう。

 

 

〔建物状況調査の報告書〕

建物状況調査を買主依頼により実施する場合で、もし契約に至らなかった時は、報告書は売り主が所持することが望ましいと思われる書類です。報告書の引渡をするのか、調査費用を売主が全額払うのか、半額払うのか、払わないのか等、事前に調整しておいた方が、後の処理がスムーズになります。

 

 

〔建物状況調査結果の効果と内容〕

買主は物件を購入したいという心理状態において、様々な事を容認して話が進む事がありますが、いざ冷静になると、話が違うと言ってクレームや紛争に発展することもあります。建物状況調査は、目的物の性状を第三者が客観的に把握したものであるというのがメリットといえますが、調査する範囲(調査箇所)と調査方法(非破壊検査、調査できない箇所等)に限定があること、これ以外の蝦疵(埋設物、地盤沈下など)や心理的瑕疵の紛争までは防止できないことを理解していただく必要があります。

告知書や写真を積極的に併用して、契約書を作成する方がトラブル防止に役立つと思われます。ただし、告知書における「知らない」との記載については注意が必要で、売主の認識は「知らない」又は「ない」であり、買主の認識は「存在しない」という受け取り方をすることが多い様です。調査していないから知らないのか、住んでいないから知らないのか等を具体的に記載し、後から「こんなものだと思わなかった」ということが起こらない様に、売主によく説明し、理解して記載していただくことが必要です。

 

〔適正取引推進機構主催の研修会より〕